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働き方を模索する緩和ケア認定看護師の物語

看護師を13年ちょっとやってみて看護師になってよかったと思うこと。


少し前のお話ですが、犬のお散歩をしていたときに、あるおばあさんに出会ったんです。
そのときに色々と立ち話をしていたのですが、別れ際におばあさんに「今日はあなたとお話しできてよかった」と言ってもらえました。

私は当時、流産をしたばかりで誰にも会いたくなくて、誰とも話したくなくて、引きこもりがちになっていて、ようやく犬のお散歩だけは行けるようになった頃でした。

近所の方と「おはようございます」程度の挨拶を交わすだけだったのに、その日はなぜだかお話をする気分になりました。他愛ない話だったので、今となっては何を話したのかほとんど覚えていませんが、確か神社の草木の手入れをしている方の話とか、道路沿いの花壇に水を与えている方の話とか。これまでの私なら絶対に興味も持たないし、聞こうとも思わなかった話だったように思います。でも、今思うと、そうやって私の暮らす街は誰かの支えで綺麗に保たれているし、神社の草木や道路沿いの花を見る心も持ち合わせていなかったんだなって。


ただ偶然出会えたおばあさんだったし、私が彼女に何かを与えたとは思えないのに、「あなたとお話しできてよかった」と言ってくれたんだなと思い出すと彼女の優しさを実感します。



看護師になったばかりの頃も、穏やかなおばあさんやおじいさんに優しくしていただいていたのを思い出しました。
田舎から出てきた私を「うちに下宿させてあげたい」と毎日のように言ってくれた患者さん。
注射の技術が未熟だった私に「俺の腕を使って練習しなさい。そうやってあなたがいつか患者さんを助ける看護師さんに育つんだよ」と言ってくれた患者さん。


経験を積んでからも「あなたみたいな看護師さんがいてくれると私たち患者はほっとするのよ」と言ってくれた患者さん。
「お願いだから転勤しないでね。あなたが行く先の病院に付いていくからね」と言ってくれた患者さん。
末期がんの患者さんは「俺を看取るのはあなたであってほしい」とまで言ってくれました。


たくさん有難い言葉をかけてもらったから、今までやってこられたんだなと思います。
忙しい中にも、看護師の私という存在に確かに向けられていた感謝の気持ち、払ってもらった敬意があることを知っていたから、つらいことがあってもやっていけたんだなと思います。


流産のつらさから立ち直れず、看護師という仕事を休み始めた頃、私はもう二度と看護師はしないかもしれないと思っていました。
全く違う仕事をして、今から第二の人生を歩もうと思っていました。


ですが、こんな日常の中にもやっぱり患者さんからもらった素敵な言葉を思い出す瞬間が溢れていて、やっぱり私は看護が好きなんだなって心から思えました。
まだまだ自分が何を選ぶのが正解なのか決められずにいますが、看護師をしても、違う職種を選んだとしても、絶対に今までの経験は生かされるだろうと自信があります。


どうして突然こんなことを思ったのか自分でもわかりませんが、なんとなく今の気持ちを言葉にしたかったので残しておきます。