しぽログ

働き方を模索する緩和ケア認定看護師の物語

労働環境は労働者の精神を変える|国立病院機構のストライキを見て思うこと


私は今月から「がん治療専門クリニック」で週1~2回ペースで働いています。


これまで急性期病棟でばたばたと走り回っていた私にとって、クリニックで働くということは想像もできませんでした。

と言うのも、「クリニックは子持ち看護師が働くところ」とか「クリニックは20年選手が働くところ」というなんとなくのイメージがあったんだろうと今は思います。



クリニックではもちろんお子さんを育てながら働いている看護師さんばかりで、子なしはおそらく私だけです。


看護学校では「とにかくはじめは急性期病院でバリバリに働くこと」が推奨されていました。
急性期を知らないと、どこでも活躍できる看護師にはなれないという考えがすり込まれていました。


例に漏れず私もその刷り込みのとおり急性期病院に入職したのですが、たしかに技術面はどんどん経験できましたし、退院10人・入院10人という感じで回している現場の苦労を知りました。
退院処理が終わる前に予定入院の患者さんがわんさかやってきます。


だから精神的にはかなり鍛えられました。
キビキビと動かないと患者さんを待たせてしまいますし、治療に遅れが出てしまいますから。
頭はフル回転させていて、気が抜ける瞬間はほとんどありませんでした。


元々はおっとりしていると言われていた私も、いつしかサバサバ、テキパキ、男前、と言われるようになりました。
性格って大人になってもいくらか変わるんですね~( ・∀・)



そして疲れ果て、今は関心があるがん看護に特化したところで働きたいと思い、たまたま求人を見つけて「がん治療専門クリニック」に運良く入職できました。



そこで思ったのが、忙しさがこうも違うということと、クリニック全体が穏やかだということでした。
私ももちろん走り回ったりはしませんし、気持ちが焦っていることもありません。



オリエンテーションを受けながら、背後では「さんし、じゅうし!(3✕4=14)」・・・・「あはははは!3✕4=12です!ダブルチェックの意味がない!」という笑い声が聞こえてきました。


こんなに明るくて活気があって、スタッフみんなが穏やかで、とても衝撃を受けました。
元の職場も人間関係は良かったのですが、どこかみんな仕事に追われていて、焦りや苛立ちを感じてきました。
私自身も話しかけられると「ちょっと今忙しいんだよな…」という気持ちに何度もなったことがあります。


クリニックも忙しい日はもちろんあるようです。
私が入職した時期が、なぜかたまたま患者数が減っていたようですが、1日に8人近い患者さんの抗がん剤を2~3人の看護師でしているのですから、たしかに大変でしょう。
それでもおそらく、先輩方の穏やかな心は変わらないのだろうと思います。
私とは人生経験も違いますし、私が一番下っ端で看護師経験も10年ほど開きがあります。
尊敬する人が職場にいるということは、とてもありがたいことだったな、と思い出しました。



ちなみに院長先生は、患者さんのためにハーブティーや珈琲を自ら淹れて病室に届けるようなお医者さんです。
どの先輩も言っていたのは、「先生が怒っている姿は見たことがない」ということでした。
仏なのかしら。


優しい人が多い労働環境に身を置くと、自然と優しい気持ちになります。
そして、ゆとりある心で患者さんのケアができるでしょうから、私のしたい看護はここにあるのかもしれないなという期待が膨らみます。


優しい心って伝染するのかもしれませんね。
院長先生のお人柄で集まったメンバーなので、こんな雰囲気のクリニックができたんだろうと思います。


それにしても国立病院機構の病院は、全国各地でストライキが勃発しているようですね。
ニュースを見る度に悲しい気持ちになります。
辞めて良かったな・・・という気持ちも同じくらいあります。


森を見て木を見ずの精神で運営してきたのだから、正直、国立病院機構は自業自得だとしか言えません。
もっと昔から反乱を起こしたいと思っていた看護師はたくさんいたのですから。
その声に耳を傾けなかったのだから、ストライキは起こるべくして起こったのではないでしょうか。


こんな状況であっても、退職は1年半後しか認めないと言われている看護師もいるのですから、働きたい人はどんどん減るでしょうね(;゚ロ゚)


急性期でも慢性期でも、大きな病院でも診療所でも、どこでもそこでしか学べないことってあるだろうと思います。
とにかくこれ以上潜在看護師を増やさないでほしい。
せっかく看護師になったのに、違う仕事を選ぶ人が多いのは悲しくなりますね。

という今日の起き抜けのぼやきでした。